相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割について

ピックアップコラム

2025/4.5

相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割について

相続人の中に行方不明者がいる場合、このままでは遺産分割協議ができません。遺産分割はすべての相続人が参加してしなければならないからです。行方不明の相続人がいる場合の対処法には

・不在者財産管理人の選任

・失踪宣告 があります。

 

それぞれの制度についてご紹介いたします。

 

不在者財産管理人

共同相続人の中に従来の住所又は居所を去った者があり(不在者)、その者が財産管理人を置かなかった場合に,他の相続人は家庭裁判所に対しその選任を選任を請求し遺産分割協議に参加させることができます。生死不明にかかわらず、生存が確認されていても連絡を取る方法が全くなければ不在者として取り扱われます。これには弁護士や司法書士などの専門家が選任されるケースがあります。ただし、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。

 

失踪宣告

不在者の生死が明らかでない状態が一定期間継続している場合、利害関係人は家庭裁判所に申立てを行うことで、対象者を特定の時期に法律上死亡したとみなす制度です。失踪宣告にはさらに枝分かれし、

普通失踪(不在者の生死が7年以上明らかでない場合)

特別失踪(戦争や船舶の沈没等によって生死不明になり、危難が去ってから1年以上が経過した人)

となります。

普通失踪の場合は7年の期間満了時に、特別失踪は危難の去った時に死亡したものとみなされます。

 

どちらを選択するか

不在者財産管理人の選任は、行方不明になった期間に制限がなく、相続人が行方不明である場合です。生きていることが確実であっても、連絡を取ることができなければ不在者財産管理人の選任手続きをとることができます。

一方、失踪宣告を利用できるのは不在者が生死不明であり、生死不明となってから7年が経過している必要があります(普通失踪)。生きていることが確実であり連絡が取れないだけであれば失踪宣告はできません。

 

それぞれの手続きについて

不在者財産管理人

申立人

・利害関係人及び検察官

利害関係人とは債権者や推定相続人などです。

 

管轄

・不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所

 

費用

・収入印紙800円分

・連絡用の郵便切手(家庭裁判所により変わります。)

・予納金 不在者の財産の管理に必要な費用や財産管理人の報酬は不在者の財産から支出されますが、預貯金や現金などが不足し迅速な支出が見込まれない場合は数十万~の予納金を求められます。

 

申立てに必要な書類

・申立書

裁判所のHPにあります。

申立ての趣旨、申立の理由等記載します。不在者が従来の住所又は居所を去った経緯及びその後の状況、不在者と申立人との関係、申立の動機等も記載します。また、財産目録も作成する必要があります。

 

・添付書類

①不在者に関係するもの

⑴戸籍謄本(全部事項証明書)

⑵戸籍附票

⑶不在の事実を証する資料(不在者宛の不着郵便物、行方不明者届受理証明書、親族への照会及び回答書、現地調査報告書等)

⑷不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金通帳の写し、有価証券の残高報告書等)

②不在者財産管理人候補者に関するもの

⑴住民票又は戸籍附票(本籍の記載有)

③申立人に関するもの

⑴利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本、賃貸借契約書の写し、金銭消費貸借契約書の写し等)

⑵法人の場合はその登記事項証明書

 

そして、不在者財産管理人が遺産分割をするには家庭裁判所に権限外行為についての許可をもらわないといけないのでその手続きもすることになります。

 

不在者管理人の権限外行為についての許可

申立人

・不在者財産管理人または不在者が置いた管理人

 

管轄

・不在者の従前の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所

 

費用

・収入印紙800円分

・連絡用の郵便切手(家庭裁判所により変わります)

 

申立に必要な書類

・申立書

申立ての趣旨及び申立ての理由を記載します。

申立の趣旨には「申立人が、不在者の財産管理人として、被相続人甲の遺産を、別紙遺産分割協議書(案)のとおり分割することを許可するとの審判を求める。」などと書きます。

申立の理由には、不在者財産管理人が権限の範囲を超える行為をすることについて、必要性や相当性を明らかにします。

 

・添付書類

①遺産分割協議書案

②相続関係書類(戸籍謄本等)

③遺産の査定書、不動産の登記事項証明書等

 

 

失踪宣告

申立人

・利害関係人(不在者の死亡につき法律上の利害関係を有する者です。)

配偶者 推定相続人 受遺者 親権者 不在者財産管理人等です。

 

管轄

・不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所

 

費用

・収入印紙800円分

・連絡用郵便切手(裁判所により変わります)

・官報公告料約5000円

 

申立に必要な書類

・申立書

申立ての趣旨及び申立ての理由を記載します。

申立の趣旨には「不在者に対し失踪宣告をするとの審判を求める。」などと書きます。

申立の理由には不在者の生死が不明であること、生死が不明となった時期及びその後7年間が経過(普通失踪)していることを書きます。また失踪者の所在及び生死が不明となった経緯や申立人との利害関係、死亡したものとみなす必要がある理由なども明らかにします。

・添付書類

①不在者の戸籍謄本及び戸籍附票(3ヵ月以内)

②失踪を証する資料

・不在の事実を証する資料(不在者宛の不着郵便物、行方不明者届受理証明書、親族への照会及び回答書、現地調査報告書等)

・不在者の生存が最後に確認された時期を示す音信の履歴(普通失踪)

・不在者が危難に遭遇した蓋然性を示す資料(特別失踪)

③利害関係を証する資料(不在者との関係性の分かる戸籍謄本等)

 

失踪宣告の申立て後

家庭裁判所は、失踪宣告の申立てがあったときは、その旨を官報に公告します。

公告の内容は次のとおりです。

①不在者について失踪の宣告の申立てがあったこと

②不在者は、一定の期間までにその生存の届出をすべきこと

③前号の届出がないときは、失踪の宣告がされること

④不在者の生死を知る者は、一定の期間までにその届出をすべきこと

⑤申立人の氏名又は名称及び住所

⑥不在者の氏名、住所及び出生の年月日

②の一定の期間とは普通失踪で3か月、特別失踪で1か月です。その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がされます。

失踪宣告がされると申立人に対して審判書謄本を送達します。

審判書謄本が届いてから2週間、誰も異議申立てを行わなかった場合、審判が確定します。

申立人は審判が確定してから10日以内に、市区町村長(役場)に失踪の届出をします。届出は不在者の本籍地又は申立人の住所地の役場にしなければなりません。

 

必要書類

・審判書謄本

・確定証明書(家庭裁判所に確定証明書の交付の申請をします。)

 

失踪宣告された者が生きていた場合

失踪者が生きていた場合、または失踪宣告により死亡したものとみなされた時と異なるときに死亡したことが分かったときは、失踪宣告の取り消しを家庭裁判所に申告します。後述の申立人は失踪者が生存すること又は失踪宣告で死亡したとみなされた時と異なる時に死亡したことの証明をしなければなりません。

 

申立人

・不在者本人

・利害関係人(配偶者、親、子など)

 

管轄

・不在者本人の住所地の家庭裁判所

 

必要書類

・失踪宣告取消審判申立書

・失踪者の戸籍謄本(3か月以内)

・失踪者の戸籍附票(3か月以内)

・失踪者の写真

・申立人の利害関係を証する資料(親族関係の場合は戸籍謄本等)

 

費用

・収入印紙 800円分

・ 連絡用郵便切手 (裁判所により変わります)

・後日、官報公告料として1763円の納付が必要

 

失踪宣告が取消されたときの効果

・失踪宣告の効力が失われ、原則として失踪宣告はなかったものと扱われます。

 

失踪宣告の取消しの例外

・失踪宣告の取消しにより、失踪宣告はなかったものと扱われます。しかし、その効果の喪失を例外なく貫けば、失踪宣告を信頼して取引をした契約の相手方、配偶者や相続人などに思わぬ損害を与えるおそれがあります。そこで民法では「その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。」と定め、例外を認めることとしました。

「善意」とは当事者双方が善意であることが必要です。失踪宣告が事実に反することを知って(悪意)相続した相続人から財産を譲り受けた者は、例え譲受人がそれを知らなかった(善意)としても権利を取得しません。また、失踪宣告によって財産を得た者は、失踪宣告の取消しによってその権利を失いますが、その財産を得た者が善意であるときは、現に利益を受けている限度(財産が現存している限度)で、その財産を返還すれば良いとされています。