根抵当権の債務者が死亡し相続が開始した場合について

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2024/12.11

 

根抵当権の債務者が死亡し相続が開始した場合について

 

【事例】

アパートを経営しているAは、甲銀行から融資を受けており、A所有のアパートと敷地を担保に次の根抵当権が設定されています。

【根抵当権の内容】

・極度額   : 1億円

・債権の範囲 : 銀行取引 手形債権 小切手債権 電子記録債権

・債務者   : A

 

これは債権者甲銀行と債務者Aとの間で“債権の範囲”にかかる取引があった場合、極度額1億円を限度として債務を担保するという内容です。

 

令和6年3月22日にAが死亡しました。

Aの相続人は配偶者B、子C、子Dの3名で、話し合いの結果、アパート経営はCが引き継ぐこととなりました。

死亡した時点で、Aは甲銀行に対し5,000万円の債務がありました。(上記根抵当権の債権の範囲に含まれます。)

 

このとき、この根抵当権についてどのような登記が必要になるでしょうか。

 

 

①土地と建物の相続による所有権移転登記

いわゆる相続登記です。もし、Aが遺言書を残していたら、基本的にはその内容に従って登記します。遺言書がない場合には、法定相続人であるBCD全員で話し合いをして(遺産分割協議)遺産をどのように分けるかを決め、その内容に沿った登記をします。 ここでは分かりやすくするために事業を引き継ぐCが土地と建物を相続したとします。

これにより土地と建物の所有者がCに移ります。

 

②相続を原因とする債務者の変更登記

次に根抵当権の債務者を、AからBCDへ、相続を原因とした根抵当権の債務者の変更登記をします。Aが亡くなった時点で負担していた金銭債務については、相続人が複数いる場言、原則として法定相続分に応じて分割されます。この債務は法律上当然に承継されるものですので、遺産分割協議の対象とはなりません。遺産分割で相続人の間だけで債務の引受人をCと決めてもその登記をすることはできません。

 

③指定債務者の合意の登記

設定者(不動産の所有者C)と根抵当権者(甲銀行)との合意で指定債務者をCと定めます。指定債務者とは甲銀行との取引を引き続き行う人のことです。これにより、根抵当権は相続開始の時に存する債務(5,000万円)のほか、甲銀行とCが相続開始後に負担する債務を担保することになります。

この登記は債務者の相続開始後6か月以内にする必要があります。亡くなったのが令和6年3月22日なので、令和6年9月22日までです。それまでに登記をしないといけないので、実際には9月20日の17時15分がリミットです。(令和6年9月22日は日曜日)

もし、6か月の期間に間に合わなければ、根抵当権は相続開始の時に確定したものとみなされるので、根抵当権は相続開始のときにあった債務のみを担保する事になり、相続開始後に発生した債務は担保されなくなってしまいます。

 

※ここまでの整理

①の相続登記により土地と建物の所有者がA→Cとなります。

②の債務者の相続による根抵当権の変更登記によりAが相続開始までに負っていた債務はBCDが引き継ぐことになります。

甲銀行→B

甲銀行→C

甲銀行→D

③の指定債務者の合意の登記により、相続開始の時にある債務5,000万円とCが相続開始後に甲銀行に対して負う債務が根抵当権で担保されます。

 

④債権の範囲の変更登記

事業を継ぐのはCなので、BとDは②で負った債務をCに移したいと考えます。

そこで、②の債務者の相続でBとDが承継したAの債務について、当該債務をCに移し相続開始時にあった債務5,000万円はCのみが負担するという免責的債務引受契約をします。

 

BとDから引き受けた債務は、Aから承継した債務そのものではなく、免責的債務引受契約をしたことにより発生した②とは別の債権債務になったので、根抵当権による担保の対象から外れてしまいます。そこで、この債務を根抵当権によって担保させるために、債権の範囲の変更登記を申請します。

被担保債権の範囲に、ⓐBとDがAから相続し、Cが免責的に引き受けた債務を債権の判に追加します。ⓑまた、CがAから承継した債務を債権の範囲に含めます。

 

結果として、根抵当権は、ⓐⓑの特定債務と、Cと甲銀行間の取引から生じる不特定の債務を担保することになります。

 

登録免許税

①所有権移転登記        不動産評価額×4/1000(特例措置あり)

②根抵当権の債務者の変更登記  不動産の個数×1000円

③指定債務者の合意の登記    不動産の個数×1000円

④根抵当権の変更登記      不動産の個数×1000円

 

となります。

 

 

補足:抵当権と根抵当権について簡単にまとめてみました。

 

抵当権と根抵当権は、どちらも担保物権の一種ですが、利用目的や仕組みにいくつかの違いがあります。以下にそれぞれの特徴と主な違いをまとめます。

  1. 抵当権

特徴

特定の債権(例:1回の融資や特定の金銭債務、住宅ローンなど)を担保するために不動産に設定します。不動産の所有者が債務者である必要はありません。

債務者が債務を履行しない場合、担保物件を競売にかけて抵当権者(債権者)が優先的に弁済を受けることができます。

一度設定された抵当権は、その債権が消滅すると同時に消滅しますが登記は抵当権の抹消登記を申請しないと消えません。

 

  1. 根抵当権

特徴

継続的な取引関係で発生する複数の債権(例:複数回の融資や売掛金取引)を担保するために不動産に設定します。不動産の所有者が債務者である必要はありません。

不特定の債権を担保の対象とでき、将来発生する債権も含めて極度額という一定の枠で担保します。よって債務を完済しても枠は残り続け新たな債務を負っても改めて根抵当権を設定する必要はありません。

債務者が死亡するなど一定の条件で元本が確定し、確定後はその時点で存在している債権のみを担保する抵当権のような担保権に変わります。。

個人経営の会社の社長が会社の債務を担保するために自宅不動産に設定したり、アパート経営をしている人がアパートに設定したりします。【今回の事例】

 

極度額:根抵当権では、継続的な取引から生じる不特定多数の債権を担保対象にするため、どの程度まで担保できるか金額の上限を明確したものです。